より良い人間関係づくりに、教員は努力します。孤独で寂しい人を作らないように気遣うことができる、温かい集団づくりは大切なことです。が、配慮される側の特徴が強すぎる場合、周囲の対応力には限界があります。でも、その限界を感じさせずに人と交流できる生徒がいました。優紀(ゆうき)です。優紀は男児として出生し、女子と共に過ごしていました。同級生と明るく交流する姿が印象に残っていますが…。
特徴が強すぎる人をも、自然に受け入れる子
ここまでのいきさつ → LGBTQ「痛みを抱えて生きる?」①(Eさんの持ち味 担任悪4③)
自然に他者を受け入れる表情
性的マイノリティにあてはまるだろう、優紀。
私が、この優紀から学ばせてもらった「“自然に他者を受け入れること”の、新たな道筋」。
そこに至った「きっかけ」は、たったひとつの場面での、優紀の表情でした。
関わり方が難しい子
私が教員として関わった生徒のうち、他生徒からの「関わり難さ」が、あまりに顕著だった生徒「ルリ」(詳しくは→ 担任が悪いからウチの子がいじめられる! その1 読みとばし可)。
周囲の人間の表情は、嘲笑、軽蔑、憐憫、そのどれかという、残念なものばかりでした。
人の集まりは、個性を認め合い、生かし合う集団でありたい、そういう集団を醸成したい、そんな思いで教員の仕事に臨みました。
でも、その特徴の強さを前に、私は「己の教員としての調整力」の限界を感じました。
たった一人
そんな中、たった一人、「ルリ」に対し温かい表情や言葉がすっと出る生徒が優紀だったのです。
表情も声色も自然体そのものでした。
孤立しがちな「ルリ」に対し、声をかける生徒は他にもいました。
が、その表情には「努力して優しさを保つ」感がありました。
心から受け入れていると思われる生徒は、残念ながら、優紀以外いなかった…。
明日は会えるね!
「ルリ」が、法事で欠席した日です。
いつも、休み時間になると優紀の学級へ行き、談笑の輪に入っていた「ルリ」ですが、今日はその場にいません。
翌日は法事も終わり「ルリ」出校という情報を得た優紀が、清々しい表情で
「明日はルリに会えるね!」と、仲間に言いました。
言われた方の表情は笑顔でしたが、優紀に調子を合わせているだけでした(優紀が不在の場面では、「ルリ」への表情は違っていたので)。
私は、10年以上経った今でも、あのときの優紀の表情、声色を鮮明に覚えています。
優紀が放つ雰囲気は、明らかに他の生徒達と違っていたのです。
柔和な表情のあつまり
「ルリ」は、他者の悪口や極端なネタを言いがちなため、会話する相手にとって困惑をしょい込むことになりがち。
だから、会話も続かなくなります。
でも、優紀の前では「ルリ」は「良い子」でした。
その談笑の輪にいる「ルリ」は、目立って発言することもなく、柔和な表情で話題に応じ、微笑んでいました。
声高に笑い声をたてることもなく、大声で聞き返したり、皆が眉をひそめる発言をすることもなく。
続きをご覧ください。→ LGBTQ「痛みを抱えて生きる?」④
上記内容は仮名であり、一部改変しています。