それぞの「得意」を生かした運動会

大関フジ大関フジ

中学校教師30年の経験から事例を紹介します。仕事熱心な教師の、心の整理の一助になればと…。ここに徐々に掲載していきます。ご自身の悩みに似た事例があれば、参考にしていただければ幸いです(・。・;。

「走り」以外の持ち味を生かせる運動会

運動会。運動が得意な子が主役の日で、苦手な子は小さくなって…。
というのは大昔の話で、今はかけっこが遅くても、集団の団結力によって勝利を味わえたりします。

運動会の盛り上がり最高潮は、徒競走よりも応援合戦演技だったりします。

足の速い子はもちろん存分に活躍しますが、「走り」以外のそれぞれの持ち味が生かされる場面があります。

教師は、生徒が意欲を持って行事に取り組める雰囲気づくり、個を認め合うことの尊さなど、何か月も前から全体指導を重ねていきます。

それぞれの持ち味を再発見できる行事づくりを、目指すのです。

それぞれの得意を生かせる種目にしたいけど

全員が出場することになっている個人100メートル徒競走等もありますが、それ以外の種目を振り分けることになります。

学級の中には、当然、運動能力の個人差はあります。

種目決めの段階で、それぞれの実情が反映されて決定に至るのが理想です。

…とはいえども、理想の「学級全員がそれぞれの得意を生かせる」結果に至るのは、なかなか難しいこと。

そもそも学級構成員は、運動能力面で偏りなく配分されるはずもなく、不均衡分は、団結力などメンタル面の育ちで補い、行事終了後の達成感につなげているのが実情です。

跳び系の競技

運動能力について、ある程度の不均衡は織り込み済みで、行事をこなします(というか、そうするしかない)。

でも、想定を越えることもあります。

この事例の学校では、選択肢3つの中から選ぶ競技があります。跳び系の競技で、「長縄跳び」「みんなでジャンプ!」「馬跳び」です。

長縄跳びも馬跳びもきびしく…

長縄跳びは、ブレながら周回する縄の動きを見極めて跳び上がるため、運動が苦手な子には難しかったりします。

また、跳べずにひっかかった子が目立ちやすいので、配慮が必要なこともあります。

また、「馬跳び」は、この事例「ルリ」には高すぎるハードルでした。

自分より身長が低い生徒による「馬」でも、ぶつかって馬もろとも転ぶか、ナナメに落ちるかという実態です。

さらに自分より体格のいいの生徒による「馬」を跳ぶ必要があります。「馬」役が膝を曲げて低くなってくれるのですが、安定感に欠けるため、結局ナナメ落ちになってしまう…。

ジャンプ幅が小さくていい競技

そのため、皆で声を掛け合って一斉に跳び上がるものなら大丈夫だろうと想定し、「ルリ」は、「みんなでジャンプ!」に出場することになりました。


「みんなでジャンプ!」は、ブルーシートに乗った生徒12人が一斉に前進ジャンプし、その瞬間、シート引き担当がゴールを目指してシートを移動させるものです。

「魔法のじゅうたん」という呼称が、一般的なようです。

教師側の水面下調整

設定されている練習時間を待たずに、どの学級も自主的に練習を開始します。

どの学級であっても運動能力の個人差はあります。それを励まし合いながら、ケンカしたり仲直りしながら乗り越え、良い思い出になったりします。

教師側としては、技術的アドバイスのみならず、人間関係の変化を観察し、必要に応じて水面下で調整します。

誤解、行き違いを放置すると、残念な思い出になるばかりか、いじめ等の問題にもなるからです。

限界の見極めが必要

ただ、生徒同士で励まし合ったり、ケンカしても乗り越えたりできる範疇は、有限です(教師のサポートがあっても)。

限界を越えてしまうと、その集団の中で優しい子が負担を抱えすぎることもある。

そして、その軋轢による、より大きな問題勃発につながりかねません。

 

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上記内容は仮名であり、内容を一部改変しています。