大関フジ大関フジ

友人関係は自然発生的に、当人同士の意志も含め育まれるものでしょう。とはいえ、なり行き任せにするのではなく、その土壌となる集団がより良いものになるよう、教員は努力します。孤独で寂しい人を作らないように気遣うことができる、温かい集団づくりは大切なことです。が、配慮される側の特徴が強すぎる場合、周囲の対応力には限界があります。でも、その限界を感じさせずに人と交流できる生徒がいました。Eさんです。

地元住民から「残念な子」と言われた「ルリ」

見た目も性格も…

特殊な特徴を持つ生徒「ルリ」。

幼少時より、彼女を知る方の言葉です。「見た目も勉強も運動も、そして性格も、残念な子」だと…。

教員として知る限り、「ルリ」ほど、他生徒から見た「関わり難さ」がある生徒は、見たことがありません。

行事で往来を共に歩いた時、視線を注がれました。指をさす子供もいました。

他とあまりに違うため、正視することをためらってしまう容貌なのです。

また、その内面については…。

憐憫、蔑みの目

人に対する好き嫌いが、はっきりしていました。

好きな人には猛アタック(男女問わず)。

嫌いな人については、陰で口汚く罵っていました。

相手によって発言を替え裏表があるため、級友も応答に苦慮していました。

「ルリ」の周囲にい(てくれてい)る生徒の表情には、正直、「憐憫」が見えました。

「蔑み」が含まれていることもありました。

「ルリ」関わる記事(読みとばし可)→担任が悪いからウチの子がいじめられる! その1

でも、この「ルリ」に対し、「憐憫」「蔑み」もなく、自分から関わろうとする生徒が一人だけいました。

Eさんです。Eさん=仮名「優紀(ゆうき)」とします。

私のこの「優紀」から、「自然に他者を受け入れること」の、新たな道筋を学んだと思えていました。

成人式には女子が増えてるかも

優紀は、男児として出生し、幼少時より女子とよく遊ぶ子でした。

小学校高学年になってもその傾向は続き、徐々に周囲の大人は眉をひそめるようになりました。

でも、同級生同士では、優紀と自然に接する児童がほとんどでした。

優紀自身が明るい性格であることも、大きかったと思います。

あっけらかんと、「成人式の頃には、女の子がひとり増えてるかもね。」と言い放っていたそうです。

「男は男らしく」派とも共存

同級生の中には、「男は男らしく」と思いがちな児童もいましたが、少数派でした。

その少数派も、優紀をいじめるなどはなく、同級生の一員として受け入れていたようです。

優紀が女子として生きたいと思っているのは、はっきり見えていました。

ただ、それと「異性観」は、関連するともかぎりません。

女子として生きたいという思いと、恋愛対象が男性か女性かについては、別の話です。

優紀には、男子同級生らを「異性」として見ている様子はありませんでした。

同級生男子らからも親しまれている雰囲気でしたし、例えば、「恋心を向けられて戸惑った」というような逸話やらも一切ありませんでした(個別に特別視できる対象がいたかにもよりますが)。

優紀本人の人柄と、周囲児童の穏やかな雰囲気により、同級生らと明るく交流し、

どこにでもある普通の学校生活をおくり、思い出を積み重ねながら学童期を過ごしていたようです(中学入学後の表情から、そういう印象を持てた)。

ただ、同級生以外との関りでは、本人の苦労が推察される場面がありました。

続きをご覧ください。→ LGBTQ「痛みを抱えて生きる?」②

 

上記内容は仮名であり、一部改変しています。