特徴が強すぎる人をも受け入れる社会でありたいもの。理想はそうでも、実際はなかなか…。その限界を感じさせずに人と交流できる生徒がいました。優紀(ゆうき)です。優紀は男児として出生し、女子と共に過ごしていました。同級生と明るく交流する姿が印象に残っていますが…。
ここまでのいきさつ → LGBTQ「痛みを抱えて生きる?」①(Eさんの持ち味 担任悪4③)
許容範囲が広い子のその後。外科手術を施した報を目にし…。
温かく穏やかな空気感
優紀の人柄。
それは、周囲の雰囲気を和らげ、他者を広く受け入れるものでした。
その色は、ゆっくりと周囲に沁み込み、温かく穏やかな空気感を作り出していました。
カドが立ちそうな言葉じたいが、出てこない感じ。
実は、人知れず苦しい思いを抱えつつ、生きていた優紀。
後日耳にした話から、優紀の担任教師や親友は、その苦しさを理解し寄り添っていたことを知りました。
が、私自身は、優紀在学当時には その苦労に全く気づきませんでした。
私自身も、優紀が放つ色に包まれ、救われていた一人だったのだと思い至ったのです。
高校カミングアウト
中学卒業後、美術を学ぶ高校に進学した優紀は、早々にカミングアウトを果たしました(そこに至る深い葛藤もあったようですが)。
本人の人柄はもちろん、芸術系ゆえ、多様な個性が認められる土壌があったのかもしれません。
私の同僚も優紀の友人も、規模の大きい都市部で、偏見に晒され苦労することを危惧していました。
が、むしろ人気者となり、生き生きと高校生活を送っていることを知って、安心したものです。
SNSでの笑顔
優紀は高校卒業後、東京の専門学校に進学しました。
いまどきの子です。
SNS発信も頻繁で、内容もニギヤカでキラキラしたものでした。
交友関係の規模も広がり、有名芸能人と共演(「おねえ」特番)できた、彼氏ができたなどの記述や写真がありました。
ちょっとした発見や不満など、日常の姿を垣間見ることができました。
ただ、写真で見る優紀の表情は笑顔でしたが、観る側としては安心しづらいというか…。
都会で、ゆるぎない己の道を見つけていけるのだろうかと…。
外科手術
上京から2年ほど経過後、外科手術を施したとありました(睾丸の切除)。
術後の痛みや腫れがあるだろうことには触れず、療養中の部屋の窓から見える川面をさす(本人の?)指が写り込んでいました。
川面は陽を反射し輝いていました。
衝撃を受けてしまった…
その投稿を見た時、私は、衝撃を受けてしまいました。
自分の考えなどが及ばないものがあると、感じました。
もう、とうに、教え子としてどうのこうのって時期じゃない、立場じゃない。
それなのに、
自分が無力であるという思いが、どうしようもなく湧き上がったのです。
続きをご覧ください。→ LGBTQ「痛みを抱えて生きる?」⑤
上記内容は仮名であり、一部改変しています。